【現役医師が解説】無痛分娩・お母さんへのリスクとは?
現役医師が解説!
無痛分娩・お母さんへのリスクとは?
「お産の痛みを減らしたいけれど、合併症が心配で…」
「背中に針を刺すのってなんか怖いし、どんなリスクがあるの…?」
無痛分娩を検討する妊婦さんから、最も多く寄せられる不安の一つが「お母さんへのリスク」です。
「痛みを取り除き、リラックスして出産に臨める」という大きなメリットがある無痛分娩ですが、医療行為である以上、一定のリスクと合併症が存在します。
ですがその多くは一時的なものであり、早期発見と適切な処置で対処可能なものがほとんどです。
今回は無痛分娩の現場で働く医師である私が無痛分娩によるお母さんへの影響、リスクについて解説していきますね!
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<目次>
はじめに
1.麻酔の針によるリスク
2.麻酔薬そのものによるリスク
終わりに:リスクを最小限に抑えるために
はじめに
そもそも無痛分娩とは麻酔薬を使ってお産の時の痛みを和らげる方法のことです。
昔は点滴から麻薬を投与することもあったそうですが、現在は『硬膜外麻酔』と呼ばれる麻酔が一般的に使われています。
硬膜外麻酔を簡単に説明しますと、背骨の隙間から針をさして脊髄を覆う膜である硬膜の外側近くにカテーテルを留置し、そこに麻酔薬を投与していく方法になります。
👇麻酔のやり方について
この方法は
■局所麻酔薬を中心に使う
■麻酔薬を血管内には投与しない
■神経の近くに投与するので少量で効く
という大きなメリットがあるため無痛分娩で最も選択されております。
一方で、お母さんの体に針と麻酔薬を使うのでリスクもあります。お母さんに起こる合併症としては
1.麻酔の針によるリスク
2.麻酔薬によるリスク
と分けて考えると分かりやすいので、それぞれ順に説明していきますね。
1. 麻酔の針によるリスク(手技に伴うもの)
無痛分娩では、背中から針を刺して、「硬膜外腔(こうまくがいくう)」という場所に細いカテーテルを留置します。
この処置では針を刺していくので、以下のようなことが起こる可能性があります。
穿刺部(背中)の痛み・内出血
針を刺した場所が数日間、筋肉痛のように痛むことがあります。また、小さな内出血(青あざ)ができることもありますが、多くは自然に消失します。
硬膜穿刺後頭痛(こうまくせんしごずつう)
麻酔の針が、予定よりわずかに深く入り脊髄を包む膜(硬膜)に小さな穴が開いてしまうことがあります(100人に1人程度、デュラパンと呼ばれる)。そこから髄液が漏れることで、「立った時に激しく痛み、横になると楽になる」という特徴的な頭痛が起こります。痛み止めなどで数日で自然治癒することが多いですが、症状が強かったり長引いたりすると『神経ブロック』や『ブラッドパッチ』と呼ばれる処置が必要になる場合もあります。
治療&経過の例)
1st:痛み止め、カフェイン、漢方薬(五苓散など)
頭痛は針を刺してから24〜48時間後に発症することが多いとされています。基本的に多くの頭痛は数日から2週間以内に自然と治ります。その間は痛み止めで様子を見たり、カフェイン(脳血管の収縮作用)や五苓散などの漢方(水分バランスの調整)で治療を行うことが多いです。
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これらの治療をしても症状が良くならない時、また症状が強くて日常生活に影響を及ぼす場合は次の治療を行うことがあります。
2nd:翼口蓋神経節ブロック: 局所麻酔を浸した綿棒などを使って、鼻の奥深くにある神経節(神経の交差点)に麻酔をかけて、頭痛や顔面の痛みを鎮める処置のことです。針を刺さなくて済むため侵襲性は高くないですが、効果は6時間から24時間ほどで切れると言われています。
2nd:ブラッドパッチ: 髄液が漏れ出ている硬膜の穴付近にご自身から採取した血液(20ccほど)を注入して、血の塊でかさぶたのように蓋をする処置のことです。処置を行ってすぐに効果が現れますが、10〜30%の確率で再処置が必要になるとされています。
血腫・感染 極めて稀(数万人に1人以下)
極めて稀な合併症ですが、背中に針を刺すことで、血の塊(硬膜外血腫)や膿(硬膜外膿瘍)が貯まって足のしびれや麻痺を起こすことがあります。これらは放っておくと永続的な神経障害を起こす可能性があり、外科的な治療が必要な場合もあるため、以下の症状があれば早めに相談しましょう。
【注意すべき症状】
□出産後から足が痺れる、動かしにくい
□背中の痛みがどんどん強くなる
□針を刺した傷が赤くなる、膨らむ
神経障害(数万人に1人以下)
こちらも極めて稀ですが、背中から針を刺した際に神経の分枝を傷付けて足のしびれや感覚異常が起きることがあります。大抵は数日で改善しますが、数ヶ月から数年単位で持続するケースもあるため、足が痺れるなどの症状が出た時は早めに診察してもらいましょう。
2. 麻酔薬そのものによるリスク(薬理作用に伴うもの)
背中に入れるカテーテルには、低濃度の局所麻酔薬を中心に投与していきます。
稀に麻薬系の鎮痛薬を追加する場合もありますが、非常に少量のみ使用します。これらの薬によって、一時的な生理現象の変化が起こることがあります。
| 症状 | 内容・対応 |
|---|---|
| 血圧の低下 | 麻酔薬の影響で血管が広がり、血圧が下がることがあります。ほとんどが自然に回復しますが、こまめに血圧を測定し、必要に応じて昇圧剤や点滴でコントロールします。 |
| 足の筋力低下・感覚異常 | 痛みを抑えるだけでなく、足の力が入りにくくなったり、しびれた感じが出たりすることがあります。麻酔が切れれば元に戻りますが、出産の時、いきむタイミングが取りづらくなる場合があります。 |
| 排尿感の消失・尿閉 | 尿意を感じにくくなるため、膀胱に尿が溜まることがあります。その場合はスタッフが定期的に導尿(管で尿を出す処置)を行うことがあります。 |
| かゆみ・震え(シバリング) | 麻酔薬(特に併用する麻薬系鎮痛薬)の副作用で、体にかゆみが出たり、寒くないのに体がガタガタ震えたりすることがあります。これらは一時的なもので自然に回復し、母体や赤ちゃんへの悪影響はないです。 |
| 発熱 | 硬膜外麻酔をした後に38度以上の発熱が起こる場合があります。発熱は分娩後自然に解熱することがほとんどですが、発熱の原因を調べるために採血などの検査が必要となる場合があります。 |
麻酔の作用でこれらの症状は生じるため、基本的に麻酔薬の効果が切れれば自然に回復することがほとんどです(数日以内)。
そして極めて稀(10万人に数人ほど)ですが麻酔が効き過ぎると以下の重篤な合併症を起こすことがあります。
局所麻酔薬中毒
麻酔薬の血中濃度が上昇しすぎることで中毒症状を起こすことがあります。多くの場合はカテーテルが血管内に誤って挿入されてしまうことが原因です。 初期症状としては『ベロや唇の痺れ』『口が苦い』『耳鳴り』『めまい』『お喋りになる・興奮気味になる』などがあります。 治療としては脂肪製剤を注入して麻酔薬を血管内から取り除くと同時に、血液循環のサポートを行います。
Point:実際に局所麻酔中毒になった人からは『耳元で電車が走るような耳鳴りがした』、『鉄を舐めてるような苦い感じがした』という話を聞きました。
高位脊髄麻酔
麻酔が効きすぎて下半身だけでなく上半身まで麻痺することがあります。多くはカテーテルが硬膜の内側(くも膜下腔)に迷入することが原因で起こります。初期症状としては『息苦しい』や『手が痺れる』、『吐き気、嘔吐』などが出現し、意識障害や呼吸停止につながる場合もあります。 重篤な状態になる可能性があるため、スタッフは麻酔が広がりすぎていないか何度も確認します。もし上記の症状が出たら迷わず伝えてください。
Point:麻酔の範囲が広がりすぎていないか『コールドテスト』という方法で確認します。
アルコール綿や保冷剤などを皮膚に当てていき、冷覚が消失しているかどうかで判断するのです。
終わりに:リスクを最小限に抑えるために
「リスク」と聞くと不安になるかもしれませんが、その多くは一時的なものであり適切な処置で対処可能です。
大切なのは、妊婦さんが少しでも違和感を感じるような症状があれば早めにスタッフに相談すること、そして専門のスタッフが万全の体制でモニタリングを行い、即座に対応できる準備をしている病院をしっかりと選ぶことです。
無痛分娩を検討される際は、ぜひ当サイトで納得のいく病院選びをしてください。そして病院が決まったら担当医とリスクについてしっかり話し合ってみてください。
ではでは!
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