【現役医師が解説】無痛分娩なのに痛い時はどうすれば良いの?
現役医師が解説!
無痛分娩なのに痛い時は?
原因と現場で行う対策について
『無痛分娩を選んだのに、思っていたより痛くてパニックになりそう…』
『友達は全然痛くないって言ってたのに、私はどうして痛いの?』
無痛分娩では「無痛」という名前から、スイッチ一つで痛みが完全にゼロになる魔法のようなイメージを持たれることも多いですが、実は全くの無痛ではないケースや、途中で痛みが出てしまうケースがあります。
せっかく無痛分娩を選んだのに、痛みに耐えるのは辛いですよね。
そこで今回は、無痛分娩の現場で働く医師である私が、無痛分娩中に痛みを感じる原因とその時にどのような対応をしているのかについて、現場の裏側を詳しく解説します!
<目次>
1.結論
2.はじめに
3.なぜ「痛い」と感じるのか?(3つの主な原因)
4.痛い時に行われる具体的な処置
5.妊婦さんにできること
6.まとめ
7.終わりに
1. 結論
無痛分娩をしているのに痛みを感じることは珍しいことではありません。
原因は「お産の急速な進行(物理的な圧迫)」「カテーテルの位置ズレ」「麻酔の効き方の個人差」などが挙げられます。
しかし、痛みを感じた時はすぐに対応が可能です。麻酔を追加したり、カテーテルを入れ替えたりすることで、多くの場合、痛みは再びコントロールできます。
「痛い」と言うのは決して恥ずかしいことではありません、むしろ早めの相談が早期診断、早期治療に繋がるケースもあります!
2. はじめに
無痛分娩では、背中の「硬膜外腔」という場所に細いチューブ(カテーテル)を留置し、そこから持続的に麻酔薬を注入する『硬膜外麻酔』という方法が一般的に使われます。
脊髄近くに少量の局所麻酔薬を持続投与することで、より安全に、より確実に痛みをコントロールすることができます。
またカテーテルにポンプを接続して持続的に麻酔薬を追加しつつ、痛みが強い時はプッシュボタンを押して痛み止めを追加投与することもでき(PCA)、妊婦さんからの満足度も非常に高いです。
多くの施設では、痛みを「10点満点中、2、3点」程度に抑えることを目標にしてます。
完全な無痛が得られるわけではありませんが、妊婦さんからは
「普段の生理痛くらいの痛みで、お産の感動を十分に味わうことができました!」
「陣痛来てから眠れるなんて思ってもいませんでした!」
と言っていただけることが多いです。
しかし、お産は千差万別。
中にはお産の進行とともに痛みが強くなってきて、無痛分娩をしているのに痛みが我慢できなくなるという状況になることがあるのです。
3. なぜ「痛い」と感じるのか?(3つの主な原因)
妊婦さんから「麻酔が入っているはずなのにどうして痛くなるんですか?」と聞かれることがあります。
その主な理由は以下の3点です。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| お産の急速な進行 | 赤ちゃんが急激に降りてくると、骨盤や産道への強い圧迫(機械的刺激)が発生し、麻酔の広がりや強さが追いつかなくなることがあります。 |
| カテーテルの不具合 | カテーテルが理想的な位置から少しズレて麻酔薬がうまく広がらなかったり、背骨の構造によって麻酔薬が片側にしか流れない「片効き」が起きたりすることがあります。 |
| 麻酔効果の個人差 | 麻酔の効き方にも個人差はあります。脊椎の曲がり具合や、硬膜外腔の広さ、また赤ちゃんの大きさやお母さんの骨盤の大きさなどによって効きやすい人、効きにくい人があります。 |
痛みが強い場合は基本的に
①急激な痛みが麻酔の鎮痛効果を上回っている
②麻酔範囲が不十分
のどちらかです。
我々麻酔科医は、今回の場合どちらなのかを判断して、原因を探り、対応を考えます。
4. 痛い時に行われる対応
では実際に、私たちが現場で「痛いです!」と呼ばれた時、どのような対応をとるのかと言いますと
以下のようなステップで改善を図ります。
■まずは麻酔の範囲と総投与量を確認
Cold testと呼ばれる冷たい布やアルコール綿を当てる方法で麻酔の範囲を確認します。
麻酔の範囲が十分広がっている場合(ヘソからお尻まで)は麻酔の強度を上げて対応します。
一方で、麻酔の範囲が不十分な場合は麻酔の範囲を広げるよう対応します。カテーテルの位置を調整したり、薬を追加投与したり、また妊婦さんの体勢を整えることで麻酔薬を広げるよう工夫します。
さらに麻酔薬を追加する前に今までの投与量も確認します。
無痛分娩2日目の人だと薬が既にたくさん投与されている場合があり、麻酔薬の投与量の上限も考えながら今後のプランを立てます。
■以上を踏まえてアクションを起こす
では具体的な対応をお伝えします。
麻酔薬の追加投与(レスキュー)
範囲を広げるために麻酔薬を追加します。ボタンを押して麻酔を足す方法(PCEA)や、医師が直接注射器で強めの麻酔薬を注入することもあります。
体位変換(体の向きを変える)
片方の効きが悪い時は、妊婦さんの体勢が原因の可能性もあります。麻酔薬は液体なので重力に従って流れる性質があり、痛い方を下にして横向きになることで、薬を患部に行き渡らせられることがあります。
カテーテルの調整・入れ替え
いくら麻酔薬を追加しても麻酔範囲が広がらない場合は、カテーテルがズレている可能性があります。
深く入ってしまっている場合は、数センチ引き抜いて位置を直します。逆に汗や動きでカテーテルが少し抜けている場合は思い切ってカテーテルを抜いて、新しい場所にやり直したりします。カテーテル の刺し直しは最も確実に痛みを取り除く手段になることも多いです。
局所浸潤麻酔の併用
子宮口全開大で赤ちゃんの出口付近が痛む場合は、直接その部位に麻酔を追加することがあります。
ただし、子宮胎盤早期剥離、前置胎盤、子宮破裂、回旋異常、胎児骨盤不均衡など、いわゆる産科的合併症が原因で痛みが強くなっている場合はこれらの対応では痛みが取りきれない場合があります。
その時は緊急帝王切開になったり、CSEA(脊椎麻酔併用硬膜外麻酔)や強力な麻酔薬(フェンタニル、高濃度の局所麻酔薬)を使用して対応します。
5. 妊婦さんにできること
一番大切なのは、「早めに伝えること」です。
痛みを我慢し続けると血圧が上がったり、胎盤への血流が減ってしまったり、母子ともにメリットが少ないので早めにご相談くださいね。
ポイント:我慢は禁物!
痛みが「10」になってから伝えるよりも、「3〜4」くらいに強まってきた段階で教えていただけると、麻酔が効き始めるまでのタイムラグを考慮したスムーズな対応ができます。
6. まとめ
同じカテーテル、同じ麻酔薬を使った無痛分娩でも、それぞれの妊婦さんのお産の進みや体の構造によって痛みが出ることはあります。
痛みが出た時は、「薬の追加」「薬の変更」「体位変換」「カテーテルの入れ替え」などで対処が可能です。
「これくらいなら我慢しなきゃ」と思わず、早めにスタッフへ伝えることが快適な無痛分娩のコツですよ!
7. 終わりに
我々の仕事は、お産が始まってから終わるまで、あなたの「痛みのバロメーター」を見守り続けることです。
「無痛なのに痛いなんて、私の伝え方が悪いのかな?」なんて思う必要は全くありません。私たちはあなたが笑顔で赤ちゃんと対面できるよう、全力でサポートするためにそばにいます。
少しでも違和感や不安があれば、いつでも声をかけてくださいね。一緒にお産を乗り切りましょう!
ではでは!
Admin
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