【現役医師が解説】無痛分娩を受けられない人の特徴は?
現役医師が解説!
無痛分娩が「できない」ケースとは?
安全性と禁忌の基準についての話
『無痛分娩を受けたくても断られる人がいるって本当ですか?』
『このままだと無痛分娩を受けられないよ、と外来の医師に言われました…』
「痛くないお産をしたい」と願う妊婦さんにとって、無痛分娩は大きな希望です。
しかし、医学的な理由で「無痛分娩ができない」と診断されるケースがあることをご存知でしょうか?
今回はどのような場合に無痛分娩が制限されるのか、無痛分娩の現場で働く医師の視点から詳しく解説します。
<目次>
1.結論
2.はじめに
3.適応(無痛分娩ができる人)
4.絶対的禁忌(無痛分娩ができない人)
5.相対禁忌・慎重に行うケース
6.まとめ
7.終わりに
1.結論
結論、ほとんどの妊婦さんは無痛分娩が可能ですが、「背骨の病気」「血液が固まりにくい」「重篤な感染症」などがある場合は、安全を最優先して実施できないことがあります。
また高度な肥満の場合も、硬膜外麻酔の難易度が高くなってしまい施設によっては無痛分娩を受けられないことがあります。
最終的な判断は、ガイドラインに基づき産婦人科医と麻酔科医が慎重に評価を行います。
2.はじめに
無痛分娩(硬膜外麻酔)は、背中に細いカテーテルを入れ、そこから麻酔薬を注入して痛みを和らげる方法です。
非常に安全性の確立された手法であり、学会からも『無痛分娩を希望する全ての妊婦が無痛分娩の適応である』とされています。
ただし、無痛分娩では針と麻酔薬を使用するため、リスクが高いと判断される場合には「禁忌(やってはいけない)」と定められています。
今回はそんな『リスクが高い人』の特徴を解説していきます。
3.適応(無痛分娩ができる人)
基本的には経膣分娩が可能でかつ、本人に無痛分娩の希望があれば適応となります。
また、医学的なメリットから強く勧められるケースもあります。
<医学的に無痛分娩が推奨されるケース>
・高血圧合併妊娠の方(痛みによる血圧上昇を抑えるため)
・心臓疾患などの持病がある方(母体への負担を軽減するため)
・脳血管系疾患などの持病がある方(痛みによる血圧上昇で脳出血になるリスクを軽減するため)
・痛みに強い不安がある方
4.絶対的禁忌(無痛分娩ができない人)
では今度は無痛分娩が禁忌(絶対にやってはいけない)となる場合について解説します。
以下のケースでは、母体に深刻な合併症を引き起こすリスクがあるため、原則として実施できません。
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 穿刺部位の強い感染 | 背中に膿瘍や強い炎症がある場合、脊髄に菌が入り髄膜炎や硬膜外膿瘍を起こす恐れがあります。 |
| 重篤な凝固異常 | 血液を固める成分(血小板など)が極端に少ないと、針を刺した時に出血が止まらず背中に血の塊(硬膜外血腫)が形成されて神経を圧迫してしまいます。 |
| 局所麻酔薬アレルギー | 使用する麻酔薬に対してアレルギーがある方はアナフィラキシーのリスクが高まります。 |
| 患者さんの拒否 | 本人の同意が得られない場合は、医学的に可能でも行いません。 |
このように医学的に禁忌である可能性があるため多くの病院は無痛分娩を実施する前に、一度無痛分娩についての説明外来が設けられています。
<無痛分娩外来で行うこと>
・同意書と説明
・血液検査(凝固機能チェック)
・問診(過去の病気やアレルギーの確認)
・診察(背骨の彎曲の有無を確認)
5.相対禁忌・慎重に行うケース
以下のケースでは無痛分娩が「絶対にダメ」ではないものの、一般的な人と比べて無痛分娩のリスク・難易度が上がるため、医師がリスクとベネフィットを天秤にかけて慎重に判断します。
■背骨の病気・手術歴
側弯症や腰椎の手術(ボルト固定など)をしている場合、背骨が曲がっている、術後の炎症・癒着が激しい、ボルトなどの機械による狭窄によって背中のカテーテルがうまく入らなかったり、カテーテルを入れても麻酔が偏ってしまう(体の左右片方しか麻酔が効かない)リスクが上がってしまいます。
■抗凝固療法中
いわゆる「血液サラサラの薬」を飲んでいる場合、休薬期間を設けて血液の凝固能(血が固まる能力)が回復するまで待つなどの調整が必要です。
■高度の肥満
背中からカテーテルを入れる時に、皮下脂肪が多すぎると「背骨の隙間が分からない」「硬膜外腔がまでが遠く、少しの針のズレで麻酔が失敗してしまう」「針がそもそも届かない」というように解剖学的に穿刺が困難となり、合併症のリスクが上がってしまうのです。
そのため高度な肥満の場合、施設側から無痛分娩ができないと断られることがあります。
BMI 35以上が基準となる施設が多いですが、施設によってはBMI30以上だと無痛分娩を断るという所もあるので必ず事前に確認しておきましょう。
■神経疾患の既往
もともと神経に病気がある場合、硬膜外麻酔による合併症があっても発見が遅れてしまう場合があります。
そのため無痛分娩管理中では麻酔による影響を慎重に見極める必要があります。
6.まとめ
無痛分娩ができないケースは、主に**「出血のリスク」「感染のリスク」「解剖学的な難しさ」**に集約されます。
多くの場合は事前の検査や問診で判断可能です。「自分は大丈夫かな?」と不安に思ったら、まずは初期の段階で担当医に相談することが大切です。
7.終わりに
産科麻酔科医として、私たちは「ただ痛みを取る」だけでなく、「安全にお産を終える」ことを最優先に考えています。
もし持病や過去のケガなどで無痛分娩が難しいと判断された場合でも、それはあなたと赤ちゃんの安全を守るための最善の決断なのです。
例え無痛分娩ができない場合でも、他に痛みを和らげる方法はあります。一人で悩まず、私たち専門スタッフに何でも相談してくださいね。
ではでは!
Admin
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