無痛分娩が広がったきっかけ

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麻酔について

現役医師が解説!

無痛分娩はどうやって始まった?

歴史を変えた女王の決断!

「無痛分娩って、いつからあるんだろう?」 

「昔は痛みに耐えるのが当たり前だったの?」

今でこそ多くの妊婦さんに選ばれている無痛分娩ですが、その始まりには、宗教的な大反対や、一人の勇敢な女王の決断、そして麻酔科のレジェンド医師による画期的なアイデアがありました。

今回は、無痛分娩の現場で働く私が、医療の歴史を大きく変えた「無痛分娩のきっかけ」について、ドラマチックな舞台裏を分かりやすく解説します!


<目次>

結論

はじめに

ヴィクトリア女王の決断

麻酔科医・ジョンスノー

キリスト教からの反対

出産当日

その後


結論

結論から言うと、近代的な無痛分娩のきっかけとなったのは、1853年、イギリスのヴィクトリア女王が第8子を出産する際に「吸入麻酔(クロロホルム)」を使用したことです。

当時は「お産の痛みは神が与えた試練だから耐えるべき」という宗教的な反発が非常に強い時代でした。しかし、女王が自ら麻酔を選び、その快適さを大絶賛したことで、世界中で無痛分娩が爆発的に普及していくことになります。

4コマ漫画風

はじめに

現代の無痛分娩は、背中から細いチューブを入れて持続的に痛みを取る「硬膜外麻酔」が主流です。安全性も非常に高く、妊婦さんの笑顔を守るための一般的な選択肢となっています。

しかし、今から約170年前の19世紀中頃は、そもそも「お産の痛みを取る」という発想自体が、社会から激しくバッシングされる時代だったのです。そんな逆風の中で、一体どのようにして無痛分娩は産声を上げたのでしょうか?


世界初の無痛分娩

医療の世界に「麻酔」が登場したのは1846年のことです(アメリカの歯科医らによるエーテル麻酔の公開実験)。

それまでは、手術といえば気絶するほどの激痛に耐えるしかありませんでした。

この「痛みを取る魔法のような技術」が生まれてすぐ、スコットランドの産科医ジェームズ・シンプソンが「お産にも麻酔が使えるのではないか?」と考えます。1847年、彼はエーテル(後にクロロホルム)を使って、世界で初めての無痛分娩に成功しました。

これによって「お産の痛みから解放される道」が開けたかのように見えましたが……事態はそう簡単には進みませんでした。


ヴィクトリア女王の決断

シンプソン医師の成功後も、世間は無痛分娩をなかなか受け入れませんでした。特に貴族や一般社会の間では「お産は痛くて当たり前」という風潮が根強かったのです。

そこで歴史の表舞台に登場するのが、当時のイギリスの最高権力者、ヴィクトリア女王です。

女王はそれまでに7人の子どもを出産していましたが、大のお産嫌いで有名でした。過去の出産を「出産の影の側面(非常に苦痛であること)」と表現するほど、陣痛の恐怖に苦しんでいたのです。

第8子の妊娠が分かったとき、女王は決断します。 「あの恐ろしい痛みを、もう二度と味わいたくない。新技術の麻酔を使いましょう」

 


麻酔科医・ジョンスノー

女王の無痛分娩を任されたのが、近代麻酔科学の父と呼ばれるジョン・スノー医師です。彼は疫学(コレラの感染源特定)でも超有名ですが、実は当時、イギリスで最も信頼されていた麻酔のスペシャリストでした。

そんなスノー医師がとった作戦は、非常に繊細なものでした。

■スノー医師の「間欠的投与法」

 完全に意識を失わせる(全身麻酔)のではなく、ハンカチにクロロホルムを数滴たらし、陣痛がグッと強まったタイミングだけ女王の鼻と口に近づけて吸わせる方法。

これにより、意識をはっきりと保ったまま、陣痛の「痛みのピーク」だけを綺麗に消し去ることに成功したのです。これは現代の無痛分娩にも通じる「お産の進行を止めずに痛みだけをとる」という理想的な管理でした。


キリスト教からの猛反対

女王が麻酔を使うと知った周囲、特にキリスト教の教会関係者は猛反対しました。 なぜなら、旧約聖書(創世記)には以下のような一節があったからです。

「あなたは苦しんで子を産む(産みの苦しみを受け入れるべし)」

当時の宗教界は、「お産の痛みはエバが原罪を犯したことに対する神からの罰であり、麻酔でそれを免れようとするのは神への反逆だ!」と主張したのです。男性の医師や宗教家たちが、こぞって「痛みに耐えるのが女性の美徳」だと叫んでいた時代でした。

しかし、ヴィクトリア女王はそんなバッシングを一切気にしませんでした。 「痛いものは痛いし、安全に取れる痛みなら取るべきよ」と、最高権力者としての意志を貫いたのです。

 


出産当日

1853年4月7日、運命の出産が始まります。 スノー医師は陣痛に合わせて慎重にクロロホルムを投与しました。

女王はのちに、この時の体験を日記にこう書き残しています。

「スノー医師が投与してくれたクロロホルムは、言葉にできないほど素晴らしい効果でした。心が安らぎ、うっとりするほど心地よく、それでいて意識ははっきりしていました」

激しい宗教的・社会的な大反対をはねのけ、ヴィクトリア女王は第8子レオポルド王子を、まったく苦痛を感じることなく無事に出産したのです。


その後

一国の女王が「無痛分娩は最高だった!」と大絶賛したインパクトは絶大でした。

あれほど大騒ぎしていた宗教家やバッシングしていた世論は一転。 「女王陛下がお使いになったのだから、素晴らしいものに違いない」 「私も次の出産では、あの『女王の麻酔(Anesthesia a la Reine)』を使いたい!」

と、イギリス中、ひいては世界中の妊婦さんから無痛分娩の希望が殺到することになりました。ヴィクトリア女王の勇気ある決断が、お産の痛みに苦しんでいた世界中の女性たちを救うきっかけになったのです。


まとめ

無痛分娩の歴史の扉は、「痛みを我慢する必要なんてない」というヴィクトリア女王の強い意志と、それを支えた麻酔科医ジョン・スノーの技術によって開かれました。

私も、お産の現場で妊婦さんの痛みがスッと消え、穏やかな笑顔で赤ちゃんを迎える瞬間を見るたびに、この170年前の先人たちの挑戦に深く感謝しています。

もしあなたが「無痛分娩を選んでもいいのかな……」と悩んでいたら、ぜひ知っておいてください。痛みを避けることは、決して悪いことでも恥ずかしいことでもありません。歴史を変えた女王のように、あなた自身が一番リラックスしてお産に臨める方法を選んでくださいね。

皆さんの出産が、穏やかで素晴らしい体験になることを心から願っています!

ではでは!

 

 

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