帝王切開・術後の流れについて
現役医師が解説!
帝王切開の術後の痛みと
退院までの流れについて
「帝王切開って、術後どれくらい痛いの?」
「手術の後の経過を詳しく知りたい!」
帝王切開での出産を控えた妊婦さんからこのような不安の声をよく伺います。
帝王切開は命を守るための大きな「開腹手術」であると同時に、終えるとすぐに「育児」という大仕事がスタートする特別な手術です。
今回は現役医師の視点から、現場で標準的に行われている術後の回復スケジュールと痛みをうまくコントロールするコツを分かりやすく解説します!
「いつから動けるの?」「痛みのピークはいつ?」といった疑問をあらかじめ知っておくだけで、心の準備ができるはずですよ!
<目次>
大まかな流れ
手術直後
手術当日
1日目
2−3日目
3−5日目
6−7日目
退院後
終わりに
1. 大まかな流れ
👇術後〜退院までの回復スケジュール
まずは、手術直後から退院後までの全体像をチェックしてみましょう。多くの医療機関で採用されている基本的な経過です。
| 時期 | 痛み | 身体の状態 |
|---|---|---|
| 2時間後 | 弱 | 手術の麻酔が残っており、痛みはほとんどありません。麻酔の影響で足が動かないため、ベッドで安静に過ごします。 |
| 手術当日 | 強 | 徐々に麻酔が切れて足も動き始めます。飲水は術後2時間ごろから許可されるため、痛み止めの内服が可能になります。早めに内服して痛みをコントロールすることが早期回復のカギです。 |
| 1日目 | 激痛 | 歩行訓練と授乳がスタートします。歩行訓練では傷の痛みが、授乳では子宮収縮による後陣痛が強くなるため辛い時期です。食事が開始されて、尿道カテーテルは外れます。 |
| 2〜3日目 | Max | 傷の炎症がピークになり、痛みが最も強くなる時期です。授乳やオムツ替えなどの育児も増えるため、疲労もピークに。 |
| 3〜5日目 | 中 | 3日目ごろから病棟内を自由に歩けるようになったり、シャワー許可が出たりします。少しずつ自立した生活へ復帰していきます。 |
| 6〜7日目 | 弱 | 退院に向けての準備期間です。長時間のお世話や沐浴指導なども入ります。最後に退院時診察も行われます。 |
| 退院 | 弱 | 7日ほどで退院です。自宅では軽い家事は可能ですが、重労働や腹圧がかかる動作はNG。1ヶ月健診まで湯船は我慢しましょう。 |
手術直後
帝王切開の手術、お疲れ様です。手術中に赤ちゃんと対面し、手術が終われば病棟へ移動します。
まだ手術の麻酔がしっかり残っているため痛みは抑えられていますが、大手術を受けた直後です。酸素モニターや点滴、血栓予防の機械など、手厚い管理のもとで身体を休めます。
また、麻酔の影響で足に全く力が入らないと思いますが、麻酔が切れると自然と良くなるので安心して下さい。
★当日からの大切なお仕事 ★
妊娠中は血液が固まりやすく、ベッドでじっとしていると足の静脈に血栓ができやすくなります(血栓症)。これを防ぐため、足には着圧ソックスと空気圧でマッサージする「フットポンプ」を装着します。
術後当日
手術の麻酔は術後1、2時間後に切れてくるので、少しずつ傷が痛み出す可能性があります。
ですが麻酔には長時間作用する麻酔薬(モルヒネ)も混ぜているので、おおよそ術後24時間は痛みのサポートが可能とされています。
早ければ術後2時間ほどで水が飲めるようになります。水を早めに飲むことは非常に大切で、脱水症状の抑制の他、腸管の動きが活発化されたり、飲み薬の痛み止めが飲めるようになるなどのメリットが大きいためです。
早めの痛み止めで痛みをコントロールすることが傷の修復にも大事なので、痛み止めは遠慮なく飲むようにしましょう!
術後1日目
手術翌日には麻酔は完全に切れているので、徐々に痛みが強くなってきます。飲み薬と点滴の痛み止めで対応しましょう。
さらに、術後1日目には痛みが強くなる大きなハードルが2つあります。『歩行訓練』と『授乳』です。
❶歩行訓練
「お腹を切った翌日に歩くの!?」
「痛いから歩きたく無いんだけど!」
と思われるかもしれません。ですがこれには明確な医学的理由があるのです。
▶︎なぜ痛いのに翌日から歩くの?
寝たきりでいると、血栓症のリスクが高まるだけでなく、腸の動きが止まってしまう腸閉塞の原因になります。早く身体を動かすことで、血液循環を促し、悪露(おろ)を出し、腸の動きを復活させるのです。
▶︎起き上がりのコツ: 背もたれを限界まで起こし、身体を横に向けて手で押し上げるように起き上がります。(腹筋は絶対に使わない!)
▶︎歩くコツ: 前かがみで構いません。傷口をクッションやお腹に当てた手で優しく圧迫しながら一歩を踏み出しましょう。
❷授乳
また、術後1日目から授乳を開始することが多いのですが、授乳を行うと『オキシトシン』というホルモンが分泌されます。
このホルモンは母乳を分泌するとともに、子宮を収縮させる作用があるため、授乳によって強い後陣痛が起こる可能性があります。(経産婦の方が強いとも)
★痛み止めは我慢しないで!★
「授乳中だから薬は控えたい」と我慢されるお母さんも多いですが、処方される鎮痛剤は赤ちゃんに影響がない安全なものです。むしろ痛みの我慢によるストレスは血流低下をもたらし、母乳の出や傷の回復を遅らせてしまいます。無理せず薬に頼りましょう!
術後2〜3日目
この時期は帝王切開における痛みのピークとなります。強く痛むのには「2つの理由」があります。
▶︎創部の炎症: 術後2、3日目に創部の炎症がピークになると言われております。歩行訓練に加えて育児も本格的に始まるため、体を動かす際に傷が強く痛む恐れがあります。
▶︎授乳回数の増加: 2-3時間ごとに、赤ちゃんの欲しがるタイミングで授乳します。授乳が増えるとオキシトシンも分泌されるため、後陣痛が強くなります。
👇以下にその対策を解説します👇
□坐薬の痛み止め: 坐薬は腸の粘膜に溶けて吸収されるため、飲み薬よりも早く効く場合が多いです。
□授乳クッション: 授乳時に赤ちゃんを乗せ、胸の高さまで上げるための厚みのある専用クッションです。傷口を守ると同時に、腕や腰の負担を激減させます。
□起き上がり指導: ベッドから起きる時に仰向きに起きるのはNGで、横向きになって腕や肘の力で起き上がるようにしましょう。
色んな手を使って痛みのピークを乗り越えましょう!
術後3〜5日目
傷口の細胞が新しく修復され始めるため、鋭い痛みは落ち着いてきます。
医師の診察で許可が出れば、2、3日目ごろから待ちに待ったシャワー浴が可能になります。入浴時のポイントとしては
・傷口の表皮は塞がりつつあり、保護シールもあるので痛みの心配は大丈夫
・ゴシゴシ擦らず、泡立てた石鹸で優しく撫で洗い流すだけ
・洗いすぎにも注意
また、食事も通常のメニューに戻り、体力が戻ってくる時期です。くしゃみや咳をすると激痛が走ることがあるため、傷口にクッションを押し当てて圧力を逃がしましょう。
術後6~7日目
退院に向けた最終準備の時期です。痛みはピーク時に比べて落ち着き、日常生活を自立して行えるようになるママさんも増えてきます。
この時期に、傷口を留めていたホッチキスを外す「抜鈎」や「抜糸」が行われ、傷口を保護するための医療用テープの貼り方が指導されます。
また、退院前の診察として子宮の戻り具合や悪露の量、傷の治り具合がチェックされます。赤ちゃんの沐浴指導などもこの時期に行われることが多いです。
退院後~1ヶ月
母子ともに経過が順調であれば、術後7日程度で退院です。経膣分娩(産後約5日程度)に比べると傷の回復を見極める必要があるため、数日長めとなります。
ただし、いくらお腹の表面の傷が閉じていても、お腹の奥の筋肉や子宮が元通りになるには数ヶ月かかります。退院後1ヶ月間は、以下を徹底してください。
- 湯船につかるのはNG(シャワーのみ)
- 重いものを持たない、走らない、自転車に乗らない
- 家事は周囲に任せて「授乳と睡眠」を最優先にする
姿勢が崩れて「腰痛」や「股関節痛」が出ることも多いため、無理のない範囲で身体を労わりましょう。
回復を早める!5つの必須ケア
最後に、回復をスムーズにし、後遺症や傷跡をキレイに保つための秘訣をお伝えします。
- 起き上がり方は「横を向いてから」 必ず一旦横向きになり、肘と手を使ってゆっくり上体を起こします。
- 「腹帯」を活用する 腹帯やさらしでお腹を固定しましょう。皮膚の揺れを防ぎ、歩行時の痛みが楽になります。
- 傷跡の保護テープケア ケロイドや突っ張りを防ぐために専用の保護テープを貼りましょう。続けることで、キレイな傷跡に落ち着きます。
- 痛み止めは「予防的」に使う 痛くなり始めるタイミングや授乳の30分前などに飲んでおくのが効果的です。
- 周りのサポートをフル活用 家事はパートナーやご家族、ネットスーパー、家事代行にすべて頼りましょう。
7.最後に
帝王切開は、お母さんと赤ちゃん二人の命を守るための立派なご出産方法です。
術後の痛みや身動きの取れなさに不安になることもあるかもしれませんが、身体は時間とともに必ず回復していきます。
一人で抱え込まず、医療スタッフやご家族、便利なサービスを遠慮なく頼りながら、赤ちゃんとの時間を育んでいってくださいね。
ではでは!
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