医師の体験談Vol.1】無痛分娩なのに激痛!?原因はお母さんと赤ちゃんの〇〇にあった!?

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帝王切開

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医師の体験談Vol.1

「痛くない」はずの無痛分娩が……?

無痛分娩の痛みのコントロールに難渋した記録

 

こんにちは、無痛分娩の現場で働く医師が運営する無痛分娩チャンネルです。

私は現在、無痛分娩を年間数百件扱う病院で勤務しており、自分が担当する妊婦さんだけでも年間200人ほどになります。

そんなわけで毎日たくさんの無痛分娩を管理していると、まれに『無痛分娩の管理に難渋する』妊婦さんも出てきます。

 

今回はそんな自分が経験した『無痛分娩をしたのに激痛があった』とある妊婦さんの体験談をさせて頂きます。

 


1. )朝9時 いつも通りの穏やかなスタート

 

その日は、30代前半の妊婦さんの無痛分娩でした。

150cmほどと少し小柄で、やや痩せ型。産婦人科、麻酔科の事前診察では特にリスクのない方でした。

今回が初めての出産で、妊娠40週ごろ自宅で陣痛が始まり急いで病院に来られました。

 

入院後は診察・準備などして無痛分娩の依頼があったのが朝9時ごろ。

その時の子宮口開大は3cmほどで、陣痛は5、6分間隔。

無痛分娩を行っても問題ないお産の進み具合でした。

 

妊婦さん:「お臍のあたりが痛みます、痛みは10点満点で8点くらいです…」

私(麻酔科医):「分かりました、これから背中にチューブを入れますね。痛みはぐっと楽になりますよ」

妊婦さん:「緊張しますが、よろしくお願いします。痛いのが苦手なので助かります。」

 

いつも通り妊婦さんに横になってもらい、無痛分娩の麻酔である硬膜外麻酔を行っていきます。

処置自体はスムーズに終わり、カテーテルから麻酔薬を投与開始。

10分後には痛みも引いてきて、妊婦さんも大満足。午前中は旦那様と談笑する余裕もありました。

 

 

 

昼頃には子宮口は5、6cmまで開大し、いわゆるお産の進行期に。

途中、何度か4、5点くらいの痛みが出てくることはありましたが、ご自身でボタンを押して痛みはコントロールできていました。

そのままお産も順調に進み、問題なく終わりそうだなと思っていたのですが……

 

16時ごろ、助産師さんから『痛みが取れなくなってきた』とのCallがあり病室に向かいます。

 

 

 

2. )16時 いきなりの「突出痛」 

 

夕方16時を過ぎた頃、私の院内携帯が鳴りました。

助産師さん:「先生、〇〇さんの痛みが強くなってきました。ボタンを押して麻酔を追加しましたが、あまり効いていないようです」

私:「わかりました。診察に行きます」

ベッドへ向かうと、そこには朝の笑顔が消え、必死に痛みに耐える妊婦さんの姿がありました。

 

 

妊婦さん:「先生……骨盤の下の方が突き刺すように痛いです……!麻酔、効いてますか?」

私:「診察しますね…… 麻酔の効果範囲は問題ないです。子宮口は8cmでお産は順調に進んでおり、痛みに麻酔の強さが追いついていない状態です。いわゆる突出痛と呼ばれるもので、強めの麻酔薬を入れて様子を見ましょう」

 

麻酔は効いているのに痛い、つまり麻酔の強度が足りない状態でした。

 

✳︎突出痛(breakthrough pain )とは

無痛分娩において麻酔で良好な鎮痛が得られている最中に、一時的に強い痛みがぶり返す状態を指します。

無痛分娩の10%程度に起こると言われており、そこまで珍しいことではありません。

原因は様々で、赤ちゃんの向きや姿勢、麻酔の効果不足、発熱、骨盤と赤ちゃんの位置関係などたくさんあります。

これらがきっかけで、陣痛が急に強くなり、麻酔による鎮痛の閾値を超えて激痛が出現します。

対処法としては妊婦さんの姿勢を変える、赤ちゃんの向きを変える、カテーテルを入れ替える、より強い麻酔薬を投与するなどがあります。

 

多くの場合、麻酔の力価(強度)を上げることで良くなります。

ですが今回は、強力な麻酔薬を何度か注入しても、突出痛は治まりませんでした。

 

 

3. ) 17時 起死回生の「CSEA(脊椎麻酔併用硬膜外麻酔)」

 

強めの麻酔薬を投与したものの、痛みが取れず妊婦さんは悶えたままです。

一度、産科チームメンバーで集まって情報の共有、相談を行います。

産婦人科医:「赤ちゃんの向きや姿勢は異常ないです。お産は進んでいるのに、痛みで妊婦さんが体力を消耗しすぎていますね」

私:「おそらく硬膜外麻酔だけではブロックしきれない痛みです。より確実なCSEAに切り替えます」

 

 

✳︎CSEA(脊椎麻酔併用硬膜外麻酔)とは

一般的な無痛分娩の麻酔は硬膜外麻酔と呼ばれる、脊髄の外側を覆う硬膜の外側に麻酔薬を投与し、それがじわじわ脊髄に届くことで鎮痛効果が得られます。

CSEAでは硬膜の内側、つまり脊髄近くに直接麻酔薬を投与するため、硬膜外麻酔より即効&強力で確実な鎮痛効果が得られるのです。

ただし、デメリットとしては効果は一時的であり、おおよそ1時間ほどで効果が切れてしまう点です。

 

以上を妊婦さんにご説明し、再度背中から針を刺してCSEAを実施。

麻酔を投与して2、3分ほどでそれまでの激痛が嘘のように引き、彼女に再び安らぎが戻りました。

 

妊婦さん:「……え、痛くない。やっと息がつけます……」

そのまま1時間ほどは落ち着いて過ごせましたが、事態は再び動き出します。

 

 

4.) 19時 進まないお産、消えない痛み

 

その後、子宮口が8cmまで開いてからピタりとお産が進まなくなりました。

それに加えて、CSEAの効果が切れてきて再び強い痛みが彼女を襲います。

これ以上強い麻酔薬を使っても、痛みが取れないだけでなく、筋力低下でお産が進まなくなるリスクが高いですし、それどころか麻酔の上限量を超えて局所麻酔中毒を起こす可能性もあります。

 

助産師さん:「子宮口8cmのまま2、3時間ほど変化がありません。赤ちゃんの心拍数も落ちたりして苦しそうです」

産婦人科医:「うーん、これ以上は分娩遷延ですね。お母さんの痛みも限界です。帝王切開に切り替えましょう

 

と、分娩遷延(一定時間お産が進まないこと。胎児心拍にも異常を来すことがある)の診断で緊急帝王切開となりました。

 


5. )20時 帝王切開での決着

 

緊急帝王切開が決まり、手術室へ。

手術室へ移動した後は、手術の痛みに耐えられるよう強力な麻酔薬を背中のカテーテルから追加します。

ちなみに無痛分娩の最大のメリットに、こういった緊急帝王切開になってもスムーズに麻酔をかけることができる点があります。

痛みが取れているかしっかり事前に確認した上で手術開始、開始5分後には無事に赤ちゃんが誕生しました。

 

「おんぎゃあ!!!」

 

手術室に響き渡る元気な産声。

 

赤ちゃんを持ち上げた産婦人科医の一言が

産婦人科医:「おめでとうございます!……赤ちゃんかなり大きいね!」

助産師さん:「体重は…3900グラムです。お母さんは小柄なのに、よく頑張りましたね。」

 

赤ちゃん、めっちゃ大きかった!

 


【振り返り】なぜ麻酔が効きにくかったのか?

 

今回のケースを振り返ると、原因は明確でした。

お母さんは150cmと小柄な体格、一方赤ちゃんは3900gとかなり大きめでした。

こういった場合、赤ちゃんの大きさに対してお母さんが小柄で骨盤の隙間(産道)が小さく、お産がなかなか進まない上に、神経圧迫が強く痛みも強くなりがちなのです。

項目内容
お母さんの体格身長 150cm(小柄)
赤ちゃんの体重3800g(かなり大きめ)
医学的な原因CPD(胎児骨盤不均衡)

 

医師の解説

今回、麻酔が効きにくかったのは、赤ちゃんの頭が骨盤に対して大きすぎたためです。これを胎児骨盤不均衡(CPD)と呼びます。

 

赤ちゃんが狭い産道を通るとき、強い圧迫が一点に集中すると通常の麻酔の範囲を超えた激痛が生じることがあります。

事前の診察で推定体重はおおよそ分かるのですが、胎児骨盤不均衡(CPD)を起こすかどうかはある程度お産が進まないと分からないのです。

実際どれだけ麻酔を足しても痛みが取れない場合、それは「これ以上は自然分娩が難しいよ」という体からのサインであることも多く、分娩遷延(もしくは分娩停止)で帝王切開に移行することになります。

 

終わりに

 

帝王切開の翌日、診察にいくと

「途中痛かった時もあったけど、つきっきりで対応して頂きありがとうございました。手術も痛みなく終えれました。」

「正直、無痛分娩でなかったと考えるとゾッとします」

と言っていただけました。

 

結果として帝王切開にはなりましたが、「無痛分娩をしていたからこそ、ギリギリまで体力を温存し、最後は帝王切開になってもスムーズに痛みなく手術に臨めた」とも言えます。

お産に「絶対」はありません。でも、私たちスタッフはどんな状況でもあなたと赤ちゃんの安全を最優先にサポートします。

不安なことは遠慮なくお尋ねくださいね!

 

ではでは!

 

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